異次元の少子化対策

 5月も下旬にさしかかり、もう間もなく6月がやってくる。

 6月。政府は異次元の少子化対策の骨太方針を発表すると言った月。

 未就学児二人を育てている親として、関心は非常に高い。

 

 ちなみに子どもを取り巻く子育て支援や税制はここ10年でかなり様変わりをしているのはご存じだろうか。

 

 https://yatawaka.com/activity/2021/photos/20210518195556.pdf

(元参議院議員 矢田わか子氏によるまとめ)

 

 大きな節目となったのが3つ

【1.2010年 民主党政権時代】

 0~15歳の扶養控除(税金が安くなる)+児童手当(5,000~1万円給付、所得制限あり)だった従来の制度から、扶養控除を失くし「子ども手当」一本化(2万6000円に増額、所得制限なし)への変更。しかし財源がないとの理由で一律1万3000円でスタートした。

 

【2.2011年 年少扶養控除廃止】

 0~15歳の扶養控除が廃止(実質増税)され、また16~18歳の扶養控除も減額(実質増税)された。この時点で、「子どもが生まれたら税金が安くなる」という祖父母世代との認識ギャップが発生する。しかしこのニュースはあまり大々的には報道されず、世間的には「子ども手当みんなもらえるようになって国はよく支援してやってる」と思われている。

 

【3.特例給付の新設、お及び特例給付の廃止(所得制限)】

 一定の年収(年収960万円=手取り約700万円)を超えると児童手当が5000円に減額される特例給付が設けられた。そして2022年とうとうその特例給付の5000円すらもらえない世帯が出てきた(年収1200万円=手取り約850万円以上)。ここで注意すべきは「世帯年収」ではなく「世帯”主”年収」が基準である。なので年収900万円同士の夫婦の子どもには満額支給されるが、年収1200万円と収入のない配偶者の夫婦には1円も支給されないのである。

 

 すでにお気づきの方もいらっしゃるだろうが、現状がすでに「異次元の少子化推進政策」を行われているのだ。さらに人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代がすでに50代になろうとしており、これから親になろうとしている世代は「1.57ショック」と言われた既に少子化のはしりの世代なのだ。そもそも少子化ではなく少親化の時代に突入している。

*1

 

 この異次元の少子化推進政策と少親化に突入してしまった危機的状況において、来月発表される異次元の少子化対策は日本の今後を決める大事な政策になるはずである。

 

 しかし、政府から漏れ出る案はなかなかパッとしない。

 ・出産一時金増額=産院による自由診療なので値上げで相殺

 ・子どもファストトラック構想=子連れ家庭同士で集中した際は変わらない

 ・児童手当所得制限撤廃?=現状財源でもめているらしい

 ・多子増額案=選挙の時は2人目3万、3人目6万と豪語していたのに最新案では1~2人目は1万維持の3人目3万と異次元感の消失

 

 案もパッとしないどころか、これらの案についても3年かけて実施と悠長なことを言っている。専門家の意見では、日本を救うには2025年がタイムリミットという試算もでている。

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 さらに、実際に出生数につながるまでは約10か月間の妊娠期間がその前に発生する。妊娠した際には役所に母子手帳をもらいにいく手続きがあるので、実際すでに今年の出生数はあらかた把握できているはずだ。これを政府が正しく理解して、本当に危機感をもって行動するならこんな悠長なことは言っていられないと私は思う。

 

 とにかく、6月の異次元の少子化対策の骨太方針はこれからの日本がどうなっていくかの分水嶺になりうる大事なものだ。私も微力ながら、政府へのパブリックコメントSNSでの周知に助力していく所存である。

 

 日本が今危機に瀕している少子高齢化は、子どもがいる人、いない人、子育てまっただなかの人、子育てを終えた人、既婚の人、未婚の人、全ての属性にいる日本人に関わる大きな問題であるということを、是非知ってほしい。

*1:1.57ショックとは、じゃじゃ馬が生まれるという迷信から出産を控えられた丙午の年の出生率1.58よりも、平時であるのにも関わらず出生率が下がったことによる少子化の衝撃を現した言葉。平成2年(1990年)の出来事。ちなみに2022年の出生率は1.27で過去最低。