新人の教育環境について考える

 先日、私の職場にも新人が入ってきた。初々しい受け答えと、やる気に満ち溢れたまなざしは私の心を和ませてくれる。仕事についてまだ右も左もわからないなりにできることを増やしていこう、職場になじもうと懸命に努力する新人の姿は微笑ましく思えてしまう。

 しかし、そんな新人もいつまでもお客様のようにぼんやりと過ごされてしまっても困るのが会社というもの。右も左もわからない新人を、戦力になるように育てるためにも教育が必要だ。

 私の職場は接客業なので、電話応対や敬語接遇が必要なのはもちろん。問い合わせなどの応対など社外の人との接する際の業務を最優先に教える必要がある。また対外業務以外にも、社内業務として物の位置の把握や使用しているシステムの操作方法の把握など覚えることは膨大だろう。

 私が新人教育に携わる時に、意識していることがある。

 

「新人がどんどん聞ける環境を用意する」

 

 新人といえど、高校や大学を卒業してきた一人の社会人である。彼らには彼らなりの経験やプライドがある。それが良く作用する場合はとても頼りになるだろう。しかし変な方向に作用した時、彼らは思いもよらない行動を起こすことがある。その思いもよらない行動を起こすときは往々にして、会社でのやり方や判断基準が分からずに自分で考えて行動する時だ。

 「自分で考えて行動する」ということ自体は決して悪いことではない。しかし、「会社でのやり方や判断基準」を明確に把握していない段階では、私たちの先輩や上司の求める言動に反する可能性が大きくなる。それを防ぐためにも、新人がどんどん聞ける環境を用意することは大変重要なことだ。

 では新人がどんどん聞ける環境を用意するためには、どうすればいいか。

 

【例】

 ・アンガーマネジメントを身につける

 ・自分自身の仕事を言語化して把握しておく

 ・スケジュール管理をして余裕のある時間を作っておく

 ・自分が答えられない場合、他の人に振れるようにしておく。

 

 もし自分が新人だったとしたらどんな人に聞きやすいか、どんな時だと聞きやすいか、ということを意識してあげる。それがまわりまわって新人の育成につながり、自分の仕事が楽になることにつながるのだ。

 

 新人教育をするのに、何も手取り足取り教えてあげる必要はない。まずはやり方と目的を教える、やらせてみる、良かった点と改善すべき点を伝える。このローテーションをひたすら回すことが基本であり最短距離だ。

 特に重要なのは「やらせてみる」だ。やり方を聞くだけでは気づかなかった不明点や疑問点を見つけることができる。そしてその際に新人が見つけた不明点・疑問点を確認していくこと。これが新人に仕事手順を覚えさせるのに非常に有用な方法だ。

 

 新人教育をしていると、「自分でやった方が早く終わる」と思う瞬間はたくさんあるだろう。しかし、そこで仕事を自分でこなしてしまっては新人はいつまでたっても育たない。また、新人にOJT研修と称して仕事を丸投げしても、会社としてのやり方は覚えられない。ここで一手間かけることが、新人のためであり、先輩や上司である自分のためであり、ひいては会社のためになる。

 中長期的な目線で新人が成長する機会を与えること、フォローをすることが、まわりまわって自分のためになることを、心の片隅にとどめておこう。