人生で一番古い記憶

お題「人生で一番古い記憶」

 

 この話題については旧友とも話したことがあります。

 ある友人は小学生のころにマラソン大会で転んで嫌だった記憶。ある友人は赤ちゃんのころ部屋にあるおもちゃに手を伸ばした記憶。

 私自身の一番古い記憶は、幼稚園入園前に新居に引っ越した記憶。新しいお家を前にドキドキわくわくした記憶があります。

 

 記憶というのは、その瞬間は忘れないと強く思っていたものでも、気づけば忘れてしまう儚いもの。勉強したその瞬間は公式も解法も理解していたはずなのにいざ試験の日には忘れてしまっていたり、見た瞬間は深く感動して一生忘れないと思っていた景色や光景も月日とともに色あせてしまう。

 

 その儚い記憶を補完してるものが、記録であり、映像であり、写真だと思います。私は幼少のころ写真が嫌いでした。自分の容姿が好きではなく、写真として記録に残り見返されるのが嫌い。自分の好ましくない容姿がいつまでも映し出されてしまうのが嫌い。美しい友人の隣に並ぶ自分の容姿が気になってしまい嫌い。

 ですが大人になりふと昔を思い返そうとして、今度は写真があまりないことにさみしさを感じました。記録がないことは、私にとっては不幸なことなのだと気づいたのです。

 そこから、できるだけ多くの写真に映るようになりました。写真を見返すことで、あの時自分はどんな場所で誰といたのか、どんなことをしたのか、何を思ったのか。写真は記憶を呼び起こす貴重なトリガーでした。

 

 子どもが生まれてからは、家族全員が写っている写真を部屋に飾るようになりました。そしてデジカメに撮りためていた写真をきちんと現像し、ファイルに収めるように。そうすることで、私も夫も子ども達も、ここ楽しかったね、この写真面白い、これ美味しかったね、と写真を見返しながら笑顔と会話が増えたのです。

 

 私の幸せな人生には、写真が必要でした。

 

 あなたはいつ、最後に写真を撮りましたか?