散歩のすすめ

 家から一歩も出ない日はあるか。

 学生時代、モラトリアム期間。私はそういう日がたくさんあった。何もやる気がでなくて引きこもり、SNSや動画サイトばかり見て世界とつながった気がしていた。自分にとって心地の良い情報だけを得て、自分の考えを固定化し、いかに自分が正しい人間であるかの根拠集めに必死だった。

 もちろん、ただの引きこもりの偏った考えは井の中の蛙である。

 

 現代社会のシステムは素晴らしく、家から出なくても外界の天気や情勢についての情報はいくらでも手に入るし、欲しいものは自宅まで届けてもらえるし、音声通話やテレビ電話で他社とのコミュニケーションだってとれる。

 しかし、そんな便利な社会に住む私たちに、あえて推奨したい。

 

 散歩に出よう。

 

 散歩にはいくつかのメリットがある。

 まず外の空気を吸える。今は花粉症が辛い時期ではあるだろうが、それでも屋内の換気が十分でない空気よりも屋外の空気のほうが新鮮で、酸素がしっかり体にいきわたることは確かだ。

 次に散歩で歩くことによって、全身の血流がよくなる。血流をよくすることは、疲労物質の排泄にもつながるし、ボケ防止にもなる。ランニングよりも運動強度が低いので、負担少なく心肺機能を鍛えるのにも役に立つ。

 また日光を浴びることで体内時計が整う。特に午前中に日の光を浴びると、夜間の自然な眠りにつながる。これは屋内の蛍光灯程度の光では得られない効果だ。

 そして目を休めることができる。散歩で屋外に出ることによって自然と遠くを見ることになる。屋内にいると見るものとの距離はよほど豪邸でない限り、せいぜい3~4m先のものくらいしか見ることはない。ほとんどが手の届く範囲のものを見ることになる。しかし屋外に散歩に出ると、自然と10mやそれ以上離れたものを見ることになる。現代社会で近視が問題となっているが、近くの物しか見ない習慣がそれを強化している。近視は身近な現象であるが、放っておくと失明につながる恐ろしい状態だ。目のケアのためにも、散歩は非常に有用だ。

 

 もちろん、散歩の際は歩きスマホはもってのほか。スマホはカバンやポケットにしまい、手に何も持たずに腕を振って歩くといいだろう。そして景色をぜひ見てほしい。道端に咲く花や、空のうつりかわり。行き交う人々や社会の一端を担い働く人々。

 自分と地続きでつながっている世界を、画面越しではなく、肌で感じてみてはいかがだろうか。